非結核性抗酸菌症
この病名ははじめて聞くという方も多いかと思います。非結核性抗酸菌症は結核菌以外の抗酸菌が肺に感染して起こる病気です。非結核性抗酸菌は土や水などの環境中にいる菌で、結核菌とライ菌以外の抗酸菌の総称です。菌の種類は150種類以上ありますが、非結核性肺抗酸菌症の80%がMAC(Mycobacterium-avium complex)と呼ばれる菌で、次に多いカンサシ菌が10%です。
結核菌と異なり、人から人へ感染することはありませんので、社会生活での制限は特にありません。しかし一度度改善しても再発もしやすい、知らないうちに感染していることが多く、初期では症状が出ないなど、厄介な病気の一つです。女性(特に中高年で瘦せ型の方)にやや多く、ここ20年で急激な増加をみせています。肺結核が年々減少しているのに対して非結核性肺抗酸菌症は増加しています。
感染源と症状
主に浴室や土を扱う作業で空気中にただよう非結核性抗酸菌を吸い込むことにより感染すると考えられています。多くは数年~10年以上かけてゆっくりと進行します。初期は自覚症状がなく、検診の胸部エックス線検査などで発見されることもしばしばあります。せき、たん、血たん、だるさ、発熱、寝汗、体重減少などが出ることもあります。
検査について
胸部エックス線検査、胸部CT検査で特徴的な影を見つけます。たんを調べ、培養で菌があれば診断になりますが、結果が出るまでに6~8週間程度かかることがあります。たんから2回以上同じ菌が出ることが診断に必要です。たんが出ない場合は気管支鏡検査を行い、検体の培養を行います。
治療について
非結核性肺抗酸菌症のうちMAC菌が原因と診断されて、症状や肺の影が悪化してくる場合には薬による治療を行います。クラリスロマイシンと抗結核薬2種類を毎日内服し、少なくとも1年半(菌が培養されなくなってから1年間)続ける必要があります。カンサシ菌は無治療では増悪することが多くあります。そのため治療薬は結核と同じ薬を用いてマック菌と同様、1年~1年半は薬を服用します。
若い患者さまで初期に発見されれば、外科的手術で病巣部分を切除することが最も効果的である場合もあります。