慢性閉塞性肺疾患
Chronic(慢性) Obstructive(閉塞性) Pulmonary(肺) Disease(疾患)の頭文字を繋げた略称です。タバコの煙や大気汚染物質などの有害な粒子やガスを吸入することで、気管支や肺に炎症が起きて持続し、その結果、徐々に呼吸機能が低下して慢性の呼吸困難・呼吸不全に陥る病気です。
現在、日本ではおよそ600万人以上の患者さまがいると推定されていますが、医療機関を受診して治療を受けている人は、25万人程度です。喫煙率が低下しない限り、COPDの患者数は今後も増えると考えられます。
原因
COPDの原因は、わが国では90%以上がタバコ煙の吸入によるものです。患者さまの90%以上は自らが喫煙者ですが、受動喫煙でも発症することがあります。タバコを吸う人の全てに起きるわけではありませんが、喫煙者のおよそ30%はCOPDになるリスクがあると考えられています。さらに、大気汚染や職業上の粉塵も時にCOPDを引き起こすことがあります。
検査について
初期の段階では呼吸困難や咳・痰などの症状が出ないことが多く、さらに、胸部のレントゲン写真やCT撮影でも典型的な異常所見が認められないことも少なくありません。このために、早期診断がされず、適切な治療が行われずに進行してしまうことが多い疾患でもあります。
確定診断には呼吸機能検査を用います。1秒間に吐き出せる空気の量を「1秒量」、最大努力で吐き出した時の肺活量を「努力性肺活量」といいます。この1秒量÷努力性肺活量=1秒率といい、この値が気管支拡張薬を吸った後でも70%未満の場合、COPDと診断されます(気道が狭くなる他の病気の除外は必要)。
治療方法
COPDの治療は、禁煙、薬物治療、全身管理の三つから成り立っています。
現時点で、喫煙されている方には、まず禁煙からはじめていただきます。症状・病状の段階によって、長時間作用型抗コリン吸入薬や長時間作用型ベータ刺激吸入薬などの薬物投与による治療を行います。
次に大切なのは、薬剤により、気管支を広げ、肺の炎症を抑えることです。COPDに用いられる薬には、経口薬や吸入薬などがあります。これらを有効に安全に用いることで、呼吸困難感を取り除き、呼吸機能の低下を遅らせることが可能です。
そして、バランスのよい食事を摂り、適切なリハビリや筋トレを行うことで、身体全体を衰えさせないことが必要です。適切な食生活や適度な運動は、COPDに合併しやすい糖尿病などの生活習慣病を改善し、脳卒中・心筋梗塞などの病気を予防する上でも有効です。さらに、うつ状態に陥らないように、適切な睡眠を取り、気持ちを前向きに保つことも大切です。
予防するには
COPDは長期的にみると併存症の治療・予防がとても重要になります。その中でも特に強調したいのは身体活動性低下や低栄養に起因する「サルコペニア」(加齢による筋肉の萎縮)と「骨粗鬆症」です。
薬物治療により呼吸困難感や運動耐容能を改善させ、運動療法(リハビリテーション)や栄養療法により筋肉や骨の機能を維持することは将来の寝たきりや要介護状態への予防にもつながるためとても重要です。また骨密度検査を行い骨粗鬆症と診断された場合には適切な治療を受けることも重要です。
その他、感染予防のためワクチン接種(インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン)も勧められます。